組織プレーをしよう
2001/11/19 writer: イトウ
先日、テレビでジュビロ磐田の試合を観ていた時に次のようなプレーがありました。
最後方のDFからFWの中山へロングパス
↓
ゴールから30~40m離れた位置にいた中山選手はヘディングでボールを後ろに落とす
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すぐ後ろにいたMFの服部選手がこのボールをダイレクトでロングシュート
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ボールは大きく枠をハズれて相手チームのゴールキックとなった
良いプレー?悪いプレー?
私はこのプレーを見たときに第一印象として「もったいないなぁ」と感じました。その理由は服部選手のシュートが無意味に思えたからです。せっかく綺麗につないだボールを何のためらいもなくロングシュートを放った服部選手のプレーを僕は無駄であると。
同様にジュビロの他の選手たちもこのプレーには失望しているだろうと注意深くテレビを見ていると、私は不思議な映像を目にしました。ジュビロの選手たちは失望するどころか服部選手のプレーに対して拍手をしているのです。全然ゴールできそうにない場所から無謀とも言えるシュートを放った服部選手がチームメートから称賛されていました。
私はこれを見てハッとしました。それは、無謀と思えた服部選手のロングシュートは、選手全員が認識しているチーム戦術であるということに気付いたからです。ロングシュートは得点を狙うためのプレーではなく、チーム戦術を遂行するための組織プレーであったのでしょう。そのプレーは相手ゴールからの位置・距離、またはゴールする可能性という要素は重要ではなかったようです。
この服部選手のように選手全員が戦術に忠実なプレーを行えば選手間の信頼関係が強力に結ばれ、選手それぞれが自分の役割に集中することが出来るようになります。この結果、無駄なプレーは減り、各選手の持つ特徴・能力はより生かされることにつながります。
私は冒頭で述べたプレーの中にジュビロ磐田のチーム力(組織力)というものを感じました。選手全員が忠実に遂行する組織プレーがベースとなり、その上に成り立つ高い個人技術とさまざまな個性、ジュビロ磐田の強さは納得ですね。
日本のホッケーでは
それではホッケーに置き換えて考えてみましょう。
みなさんのチームには戦術はありますか?
観客がミスだと感じるようなプレーでもチーム内では納得できるような組織だったプレーをしていますか?
私が見る限りですが、みなさんのチームはいくつかの組織プレーをしています。
例えばゾーンディフェンス(ボックス)やマンツーマンディフェンスと言われているものです。これらの守備方法はチーム毎に何らかの約束事が存在し、選手はそれを意識してプレーしているはずです。したがって、これらの守備方法は組織プレーということになります。しかし、日本のホッケー界では守備時こそ前述のような組織プレーは見られますが、攻撃時には組織プレーと呼べるものはほとんど見あたりません。唯一あるとすればカウンター攻撃時のプレーくらいではないでしょうか。
意識&チャレンジが大事
「日本のホッケーに攻撃時の組織プレーが存在しない」というのはとても重大な問題です。組織プレーは「何も情報のないチーム」や「個人の力が同等のチーム」と対戦する場合にとても重要になってきます。そしてそれらのチームが対戦相手の場合、組織プレーが確立されていなければほとんど攻撃することはできません。
なぜなら、ドリブルをするにもパスをするにもハイリスクからくるプレッシャーでそれらのプレーがミスになる確立が高いからです。「攻撃できない」ということは「得点できない」ということですから最終的には「勝てない」ということにつながります。
スペイン代表(1999 Reus)
日本のホッケーがレベルアップするには日本の各チームがそれぞれオリジナルな組織プレーを持つことが必要です。どんな戦術・組織プレーでもいいです。今までの常識にとらわれないでください。失敗するのは当然、何度でもチャレンジしてください。そしてそれらを考えて頭を悩ますことさえも楽しんでください。
毎年メンバーの変わる大学生チームや練習量の少ないクラブチームでは組織プレーを確立するのは難しいかもしれません。しかしそういう環境でもみなさんがアイデアを持ち寄ることにより、斬新かつ予測不可能な戦術・組織プレーが次々と現れてくることを私は期待しています。
まず手始めとして攻撃時は「数的優位をつくるような組織プレー」を目標にしてみてはどうでしょうか?
P.S.
戦術や組織プレーを実現するためにはそのベースとなる「基礎プレー」が出来てないとダメですので基礎練習はさらに大切だということも忘れないでください。
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